Portfolio of LDS vol.1:『横塚翔太』建築家/LDS代表
最終更新: 2020年7月3日
「面白いことを提案できる人間でありたい」

Portfolio of LDSとは
『Portfolio of LDS』は、LifeDesignSupporters(以下、LDS)初のコンテンツ企画。
この企画は、当サイトに協業してくだっている方々へのインタビュー企画です。
なぜ今のお仕事についたのか、現在はどのような活動をされているのか、今後はどのように展開されていくのか。
各業界の専門家の過去・現在・未来を発信していきます。
この企画は、専門家の“物語”を多くの人に伝えたいという思いから始まりました。
各業界で活躍されていても、意外と世には知られていない。
「知られていないことがもったいない」「魅力的な人たちがいることを伝えたい」
この企画には、そんな強い思いがあります。こういうと、少しばかりお節介な企画かもしれません。それでも、きっとあなたが共感できる人がいるはず。
『Portfolio of LDS』は、各業界にいる専門家の物語を集めた“作品集”です。
ぜひ、あなたもその物語を覗いてみてください。
Portfolio of LDS vol.1:『横塚翔太』建築家/LDS代表
『Portfolio of LDS』第1弾のゲストは、現在ハウスメーカーに勤務するかたわら、当サイト『LDS』代表でもある横塚翔太さん。
横塚さんはなぜハウスメーカーに勤め、そこから建築家を目指したのか。
なぜ、LDSを立ち上げたのか。
そして、これからLDSはどのように展開していくのか。
彼の過去・現在・未来について、お話をうかがった。
・横塚翔太さんのプロフィール
大学生時代に好きだったテレビドラマの影響で「住宅」に関心を持ち、
その勢いで住宅展示場の営業マンのもとに、飛び込みでアポをとる。
そこで「人の人生観を間取りで変えられてしまう」という
”住宅”が持つ不思議な魅力に影響され、2014年に大手ハウスメーカーに入社。
当時は、町田相模原エリアを担当。
入社4年目には、8ヶ月連続契約を達成。
2018年より、同社にてみなとみらい・横浜エリアを担当。
2019年より、同社にて錦糸町を中心とした東京エリアを担当。
2020年5月より、LifeDesignSupportersの立ち上げおよび代表。
過去:「自分の苦手なことと向き合いたかった」
横塚さんは、なぜ建築の道を志したのか。その話は、彼の大学時代にさかのぼる。
「元々、人前で話すのが苦手でした」
今となっては自分でも信じられないと、笑いながら横塚さんは語る。
高校時代までは、赤面症で自信がなく、人生において成功体験もない。人前で話すのが一番苦手だった。
そんな横塚さんの転機となったのは、大学への入学だった。
多くの人が大学入学を機に、新しいことを始めたり、自分を変えようとする。
横塚さんもそんな人の一人だった。
横塚さんが変えようと思ったのは、“人前で話すのが苦手な自分”。
「自分の苦手なことと向き合いたかったんです。向きわないのは悔しいと思ったんです」
マーケティングや広告が学べる大学に入った横塚さん。
自分の苦手と向き合おうと考えていた折、一つの講義が目に止まる。
その講義は『魅力ある話し方』という名前だったそう。
そして、この講義を受けたことで、横塚さんにとって恩師と呼べる先生との出会いがあった。
ある日の『魅力ある話し方』の講義で、身近なものを面白くプレゼンすることになった。
サッカーが好きだった横塚さんは、『福神漬け』をサッカーにたとえたそうだ。
カレーにおけるルーとライスは、サッカーで言うところのフォワードで2トップ。
その流れで、横塚さんにとっての福神漬けは、トップ下に位置すると語った。
もちろん、監督(食べる人)によっては、配置や構成は変わってくる。
横塚監督の元では、福神漬けはトップ下という重要なポジション。
このようにサッカーを用いて、自分は福神漬けが大好きだとプレゼンしたそうだ。
プレゼンする前は自信がなかったというが、その結果はどうだったのか。
「先生に絶賛されました。これまで、こんなに褒められることがなかったんです。
でも、クラスの人たちも、先生と同じように褒めてくれました」
これまで成功体験がなかった横塚さんにとって、この経験はとてつもなく大きいものとなった。自分は人前で話すのが上手いのかもしれないと、自信に繋がっていた。
次はどんなことを話そう、どんな面白いことを語ろうかと考えるようになり、気がつけばプレゼンにおいて、大学内で自分の右に出るものはいなくなっていた。
過去:「きっかけはドラマだった」
成功体験から自信を得て、ますますプレゼンスキルに磨きをかけた横塚さん。
就職活動が始まり、自分の将来を考え始めた。自分は何をしたいんだろうと。
広告やマーケティング系の大学ということもあり、当初はそちら方面での就職を考えていたそう。業界研究をしながらも、根底にあったのは“人を楽しませる仕事をしたい”という気持ちだった。
結果として、横塚さんは建築の仕事を志すこととなった。
そのきっかけはなんだったのだろうか。
「きっかけは『結婚できない男』というドラマでした」
『結婚できない男』というドラマについて、簡単に補足する。
阿部寛さん主演のドラマ。建築家であるひねくれものの主人公が、恋愛や結婚、幸せについて模索する姿を、コミカルに描いたストーリーである。
就職活動をしていた頃は再放送だったが、元々好きなドラマで何度も見ていた。
主人公は建築家の設定だが、その点はドラマ内でそこまで際立って取り上げられてはいない。
しかし、その年の再放送はこれまでと印象が違った。過去に見た時は意識していなかった建築家という設定が、彼の中でとても印象に残ったそうだ。
家という選択肢が生まれた横塚さんは、いてもたってもいられず、勢いのままに住宅展示場にアポをとる。そこで営業の方から家の魅力・面白さを伝えられ、本格的にハウスメーカーを志すようになった。
「人の価値観や考え方は、家で変えられるのではと思ったんですね」
建築への志を深めることになったエピソードとして、横塚さんはこんなことを語った。
横塚さんの家は、お世辞にも広い家とはいえず、親や兄弟と一つの部屋で過ごすことは当たり前だった。そのおかげか、思春期でも親と顔を合わせたくないといった感情は、それほどわかなかったそうだ。
一方で周りの友人は、小さい頃から自分の部屋を与えられている人が多かった。
思春期になると、帰宅するなり自分の部屋へ直行。
親と顔を合わせることが少なく、必然的にコミュニケーションも減っていた。
こうした人の価値観や考えた方の原因は、間取りや家の構造にもあると横塚さんは考えた。
それならば、家の間取りや構造によって、もっとコミュニケーションが活発な家族に変えられるのではと。
元々は人を楽しませたいと思っていた横塚さんは、プラスして人の価値観や考え方も変えたいと思い始めた。
そう思わせてくれたのが、建築という仕事だった。
現在:「ハウスメーカーは安心感、建築家は独自性」
大学での成功体験や様々なきっかけから、ハウスメーカーに就職した横塚さん。
将来的には建築家として独立することを目標に、日々活動を続けている。
そもそも、ハウスメーカーと建築家の違いとはなんだろうか。
横塚さんなりの解釈をうかがってみた。
「ハウスメーカーは、トータルサポートをしてくれる安心感。
建築家は、独自のデザインやオリジナリティのある設計に特化した職です」
横塚さんいわく、ハウスメーカーは設計から建築、メンテナンス等の運用まで、トータルでサポートをしてくれる。
家を買いたいと思ってそこにいけば、一気通貫で対応をしてくれる場所。
良い意味で楽であり、安心感のあるのがハウスメーカーの特徴だ。
対して、建築家の仕事は設計に特化している。
オーダーメイドで、独自のデザインや唯一無二の家を設計するのが建築家だ。
建築家は、デザインや設計アイデアが売上に直結する。
そのため、設計してもらうのに掛かる『設計料』は、ハウスメーカーよりも高くなるのが一般的だ。
トータルで対応してくれる安心感が、ハウスメーカー。
唯一無二の家という独自性が、建築家。
横塚さんは、このように定義した。
現在:「お客様に設計の提案をしている姿を想像していた」

ハウスメーカーの営業として活躍する横塚さんだが、その志はすでに別の方向へ向いている。
それは建築家だ。
なぜ横塚さんは、建築家を目指そうと思ったのか。
そのきっかけは、社会人4年目の時だった。
「自分の中で、横塚的働き方改革があったんです」
当時を振り返り、笑いながら語る横塚さん。
3年目まで、平凡な営業成績しか残せていなかったという。
そもそも横塚さんの勤めるハウスメーカーでは、営業・設計・建設と各部署ごとの縦割りがきっちりしているそうだ。
それ故に営業のできる仕事は、お客様への販促・集客活動のみに留まってしまう。
この縦割りによる業務区分は、横塚さんの思いとそぐわない部分があった。
元々、ハウスメーカーに入社した時から、お客様に設計の提案をしているところを想像していたという。
しかし、現実はお客様を連れてくるだけになってしまっている。
お客様に設計の提案をしたいという思いは、何も個人的な思いだけではないという。
お客様が家を買うという決断をしてくれるには、3つの要素があると横塚さんは語る。
・お金
・建築時期
・間取り
3つのうち『お金』と『建築時期』は、営業で回答できる。
しかし、間取りについては、営業で対応している人はほとんどいなかった。
間取りを書く暇があれば、1件でも多く電話・訪問をしろと言われるからだ。
もちろん営業が間取りを書かずとも、それを書いてくれる部署はある。
しかし、それではスピードに劣る。
お客様に家の購入を検討してもらうには、間取りを用いて提案することが重要だ。
具体的な間取りがあって、初めて人はリアルに想像できるからだという。
「昔は行動すれば成約できるといわれた時代。でも、今は行動の質が大事な時代なんです」
だから、横塚さんは営業でありながらも間取りを書いた。そのために時間を捻出した。
無駄に時間がかかっている業務を効率化し、お客様への提案の質を高めることに注力していった。
結果として、横塚さんの成約率は飛躍的に上昇した。
8ヶ月連続契約という、10年以上のベテラン営業マンと同等の成績を収めた。
お客様に設計の提案をしたいという思いと、提案の質を高めるという行動がもたらした結果だった。
営業として大きな成績を収めた横塚さんだったが、この時に感じた思いは営業の面白さではなかった。それ以上に、設計を書くことの魅力だった。
こうして、横塚さんは建築家を目指すようになった。
未来:「色んな人たちの人生の作品集であってほしい」
ハウスメーカーで成績を残しつつ、現在は建築家を目指している横塚さん。
そうした本業とは別に、2020年5月には当サイト『LDS』を立ち上げた。
LDSとは何か。なぜ、立ち上げたのか。横塚さんのLDSへの思いをうかがった。
「LDSは、色んな人たちの人生の作品集であってほしい」
人それぞれ、自分の生い立ちや今やっていることの熱量を話したいと思うことがあるはず。
しかし、そうしたことを人に話す機会は少なく、また相手との熱量の差で話しづらいこともある。
そもそも人は人に興味がないと、横塚さんは前提を語る。
人は自分の欲しいものがある時に、人に興味がわく。
なぜなら、それは誰が作っているんだろうと気になるから。
つまりは、人は能動的に取りに行く情報のみが欲しいのであって、人から勝手に与えられる情報は雑音でしかない。
この前提を、横塚さんは覆したいと思った。
雑音と片づけてしまうには、あまりにももったいない話がある。
面白いと思ってもらえる情報がある。
だからこそ、人が興味を持てるように、人の物語を形にして発信したい。
そうすれば、専門家たちは『自分の活動や存在』を知ってもらうことができ、利用者は専門家の存在という『情報』を得られる。
「もっと人に認めてもらいと思っている自分がいます。
きっと自分と同じように思っている人がいると思うんです」
自分の物語を発信し、人から認められる場所を作りたい。それがLDSの根底にある思いだ。
未来:「面白いことを提案できる人間でありたい」

このインタビュー企画を含め、これからのLDSはどのように展開していくのか。
「正直、僕自身もわかっていません」
ほがらかに笑いながら、横塚さんはそういった。
LDSを設立した当初は、いかに利益を生み出すか、いかに有益な情報を発信できるかという点を考えてばかりいた。
その結果、自分のやりたいことは何か分からなくなっていた。
そこで一度、考えをリセットした。
まずはシンプルに『人が楽しめるもの』を作ろうと考えた。
「人を楽しませられる」「面白いと思ってもらえる」
収益よりも、まずはそんなものを作ってみる。
人を楽しませられるものができれば、人は集まる。人が集まれば、ビジネスや収益に繋がっていく。
「元々、自分は人に興味を持っていない人間だと思っていました。
でも、人と接していることが好きだと気づきました。
僕に関わってくれる人が面白いなと思ってくれる。面白いことを提案できる人間でありたいと思っています」
まだ生まれたばかりのLDS。これからどのように成長していくのかは、横塚さん自身も分からない。もしかしたら、自分の自己満足で終わるかもしれない。
だからこそ、一番側で見ている横塚さん自身が、LDSがこれからどうなっていくのか楽しみだという。
横塚さんとLDSの今後を見ていきたいと、そう思わされる熱意を感じた。
2020年7月1日